川嶋守彦展 無記、公園Morihiko Kawashima Exhibition

2016.11.26(土)~12.4(日)開廊:12:00~19:00(月曜休廊・最終日17:00まで)

「Untitled」2016 Acrylic and glue on canvas 650×500mm




わたしは絵を描いてる

あなたは絵を見ている

この鑑賞者と作者の対称性を示す言葉は「絵」という中心の折り目に沿ってその対称性が担保される。
しかしそれは「絵」が鑑賞者と作者の間に暗黙の取り決めがなされたときのみに現れる。
絵は紙や板、画布に絵具やそれに類するもので描かれた平面であり、ギャラリーや美術館、その他の壁
面に掛けられているもので、それらは絵画と呼ばれ 作家の表象物という大雑把な了解のもとに為される
作者と鑑賞者との関係性の結び目である。
このような設問は近代の美術に於いては特に珍しいものではなく、絵画や物質をめぐる関係性の操作や
干渉は現代美術の命題の一つである。
しかしながら、こういった命題に対する私自身の態度はアクティブなものではなく、定型的な関係性を
「かたちのうえで」のみ保つことに注力している。
具体的には、一見、キャンバス上に描かれた平面作品ではあるが、その作画方法はキャンバスに直接、
描いているわけではなく、別にアクリル絵具で描いた部位をはがし取り、それぞれを画面上で構成して
貼り付けたものである。
個別に描いたそれぞれの部分は対象不在の中空の筆跡であり、描かれるべき対像を示し、像に奉仕する
ものではなく、本来は分離されることのないであろう色彩と筆跡のみの薄い皮膜にすぎない。
その皮膜を選定し、編集、加工を行い、像に奉仕すべき部分へ再送して通常の絵画の「体裁」を整える
ことによって、「わたし」と「あなた」の新たな結び目を見出すことが
今回の「無記、公園」展の試みである。

                                        川嶋守彦

「Untitled」2016 Acrylic and glue on canvas 725×605mm

「Untitled」2016 Acrylic and glue on canvas